保険治療と自費治療の質の差

Q2. 保険の治療は、自費に比べて質が良くないの?

秋元:「保険は定食で最低保障、だから質も低い」と説明する歯科医がいますが、これは必ずしも正しくはありません。定食は割安ですが、質が悪いとは限りません。保険診療の質が悪くていいと考えている歯科医は、自費の質も低いので、ご注意下さい。

反対に、夜に高級コース料理を食べさせる店の、昼の定食はそれなりにお得です。いつもいい加減に手を抜いている人が、必要なときに精度を上げて丁寧にという具合に、器用に治療の質を変えられるものではありません。

この治療の質を変えられないから、まじめな歯科医ほど不満が多くなってしまいます。たとえば、歯の根の治療(根管治療)は、「米国では1根管=約10万円、日本の報酬は10分の1」だからです。米国の専門医の非保険の報酬と日本の一般開業の保険医の報酬を較べるのはおかしいのですが、多くの歯科医はこの低評価に不満をもっています。

ただ、ここで手を抜くとその後に続く治療で困ったことになります。ですから保険の評価の低さに不満をもちながら、まじめに治療をするのです。ですから「質が良くないから保険を勧めない」と言って憚らない歯科医の自費診療を、私はお勧めしません。

使える材料の制約はありますが、定食であっても質の良いものを安く提供することは可能です。そのような保険中心の歯科医は、自費中心の歯科医を「金儲け」と批判することがありますが、これも間違っています。自費が中心の場合、評判が良くなければ患者は来ません。患者に満足を与えることができなければ、成り立ちません。

もっとも、患者の満足度と評価は、治療の質とイコールではありません。必要のないサービスで患者の満足度が高いというケースもあるので、自費中心だから質が高いとも言いきれません。