歯のクリーニングの保険適用について

Q5. 歯のクリーニングは保険でできないの?

秋元:健康保険は疾病保険ですから、病気やケガという不慮の災難に際して給付をするもので、何もないときにクリーニングを給付する仕組みはありません。ただ、歯の治療の場合、痛みが出てからでは、薬を飲んで自然に治るということがありません。ちょうど糖尿病で、失明してから治療をしても、目が治らないのと同じです。自覚症状が出るほど進んだ段階では治らない病気なのです。

このため、病気が目立たない早い段階で予防的な治療をしなければ、治療しても治療しても悪くなるという悪循環に陥ります。むし歯も歯周病もバイオフィルム感染症ですので、機械的にバイオフィルムを破壊することが病気の予防であると同時にもっとも基本的な治療です。そのため、あらゆる歯科治療の再発防止において、定期的なバイオフィルムの破壊と除去が何よりも重視され推奨されます。歯のクリーニングは、ただのお掃除ではないのです。

このように歯の定期的なメインテナンスは、必要でかつもっとも合理的でありながら疾病保険のなかでは適切な位置づけを与えられない、宙ぶらりんの状態にあります。

糖尿病や高血圧では、血糖値や血圧を測って病気のリスクが高いと判断すると病名をつけます。このようにリスクが高くなった状態を病気と名付けて治療する仕組みが、歯科では確立していません。このため、現在の保険の仕組みでは、悪くならなければ保険ではカバーされないのです。

ただ、定期的なメインテナンスを重視する歯科医院では、一種の“方便”で「歯周病の疑い」「むし歯の疑い」があるとして保険を適用しています。このため、保険でできるケースとできないケースがあるのが実状です。