保険の入れ歯、自費の入れ歯
Q7. 保険の入れ歯の方が良いこともあるのですか?
秋元:まず、部分入れ歯では、歯に入れ歯を維持する装置、保険で使える材料(プラスチックの歯しか使えない)や金属の制約などがかなりのハンデキャップになるため、残った歯の保護、咀嚼しやすさ、審美性の点で一般に保険の入れ歯は劣っています。
ただ、良く噛めるということは、残った歯に負担をかけてダメにしやすいということですから、良い部分入れ歯が、長持ちするとは限りません。
総入れ歯では、事情は少し違います。保険で利用できる材料には大きな制約(金属の土台や陶材でできた歯は使えない)がありますが、それは総義歯の咀嚼しやすさ、審美性の点では、決定的なハンデではありません。むしろ総義歯は患者さんごとに条件が多様で計算しにくい治療ですので、職人的な経験が求められます。
比較的容易な症例 ── 例えば、顎の位置に歪みがなく、歯ぐきの土手のしっかりした患者さんの場合、あるいは上顎だけの入れ歯の場合には、保険でも満足できる入れ歯治療を受けることのできる可能性は小さくありません。
難易度の高いケース ── 例えば、長期間の部分入れ歯使用によって顎がアンバランスになっていたり、歯の土手がほとんどなくなって平らになっているような場合には、もう保険の制約は何の関係もなく、全面的に歯科医の経験と技術に依存すると言っていいでしょう。
ただ、一般的に言えば、経験と技術に長けた総義歯のドクターは、その手間のかけ方から、保険では採算が合わないために「保険ではできない」と言うでしょう。ただ、こういう事情ですから、総義歯に関する限りは金額と治療のレベルは比例しません。