歯周病について
歯周病は重症になると歯槽膿漏になります
歯周病は、重症になると膿が出て歯がぐらぐら動くようになります。歯の周り(歯槽)から膿が出るので、その症状から古くは「歯槽膿漏」と呼ばれていました。
歯周病の病因
歯周病は慢性の細菌感染症です。無数の細菌たちは、身を守る強固なバリア持っているため薬では治りません。細菌の感染と歯周病になりやすい遺伝的因子や生活習慣が重なったときに発症し進行します。
歯周病で歯が抜けるわけ
からだが外敵(歯周病性細菌)と戦う炎症が、歯を支える組織の破壊をもたらします。炎症によって結合組織や骨の破壊が進むのです。組織破壊の傷跡を治そうと歯と歯ぐきの境目に深く上皮が入り込みますが、これが病的な溝(歯周ポケット)になって、そこに病原性のある細菌が繁殖します。からだは汚れた自分の歯根を外敵だと認識して排除しようとするのです。歯周病がひどくなると、まるでトカゲの尻尾切りのように歯を犠牲にしてからだを守ることになります。
歯周病の基本的な治療法
歯周病の治療の原則は、病原性のある細菌性プラークを除去し、口のなかのプラークを正常な状態にコントロールすることです。どのような歯周病でも基本はみな同じです。さまざまな治療のバリエーションがありますが、それは機能や快適さ、審美性の回復、再発防止などを考慮したものです。
歯が揺れる
歯を支える組織に炎症がないときは、歯が揺れ動いていようが、動くまいが、歯周病には影響がありません。ただ噛みにくく、不安ですから、このような歯は何本かまとめて連結します。連結すると、動きはおさまります。動揺が著しいときは、安静にさせる効果があります。揺れ動く歯をつないで固定すると歯は動かなくなります。


しかし一般に歯が動くように感じるときは、炎症によって歯を支える組織が破壊されています。歯をつないで固定したら動きがなくなりますが、ここで治ったと思ったら大間違いです。十分なプラークコントロールなしに歯を固定しても、歯周病はかえって悪くなってしまいます。
プラークコントロール
口のなかには300種類を越す細菌が生態系を構成しています。口の中は、とても細菌に適した環境で、腸内と同じようにたくさんの細菌がいる状態が健康な状態なのです。細菌を口のなかから除去することはできません。病原性の強い細菌が繁殖しないように、密集した細菌のかたまりを破壊し、つねにリフレッシュすることが、もっとも合理的な細菌のコントロール方法です。
※プラーク(Dental Plaque):歯にくっついている歯垢のこと。1gあたり約10の11乗個の細菌からできており、外部から身を守る強固な独特の集落(バイオフィルム)をつくっています。ヒトに棲息する微生物は、わずかな原虫、数十種類の真菌および700種の細菌といわれています。この内300〜400種がこの口のなかのプラーク中にいます。正常な細菌叢 は健康を保つ上で必要ですが、口のなかの細菌は、むし歯や歯周病のほか、呼吸器疾患、高齢者の日和見感染症などにかかわります。
歯石
歯ぐきの病気の原因は、昔は歯石だと考えられていました。目に見える歯石は歯周病の原因ではありません。しかし、歯ぐきの下に隠れた歯石や歯根の表面(歯根セメント質)に埋まった歯石は、歯周病性細菌の絶好のすみかです。このため見えない歯石をていねいに除去することは現在も重要な治療方法です。
右図:歯石を除去したところ。
口の中で細菌たちは安定した生態系を営んでいますので、抗生物質で口の中の細菌が一掃されたときや、生活を何年も共にするような長期間の接触があってはじめて伝染します。次の歯周病原性細菌については親子や夫婦の感染が確認されています。Actinobacillus actinomycetemcomitans については親子間で、Porphyromonas gingivalis については家族内での感染が確認されています。
DiRienzo JM, Slots J et al., Infect Immun,1994
しかし重要な歯周病原性細菌である Bacteroides forsythus については、伝染が確認されていません。この三種以外にもさまざまな細菌に疑いの目が向けられてきましたが、これらの細菌は口のなかに元々いる(外来性でない)とも考えられます。
上記三種とスピロヘータは、毒性が高いだけでなく、外来性で、組織(粘膜内部)侵入の能力が確認されています。
Sandros J, Papapanou PN et al., Infect Immun,1994