入れ歯について
部分入れ歯の仕組み
部分的に何本かの歯を失ったときは、部分的な入れ歯で対処します。
部分入れ歯は、かむ力をどこで受けとめるかによって粘膜負担の入れ歯と歯根膜負担の入れ歯、およびその折衷型に分かれます。
力を粘膜で負担する場合は、幅広いレジンの面(床:しょう)をあごの粘膜に合わせてつくり、歯につける装置(維持装置)は左右前後にブレないためのはたらきをさせます。維持装置はバネ式のものから鋳物で歯を抱え込むようなものまで多様です。保険の入れ歯は主にこの考えでつくられます。
力を歯、すなわち歯根膜で支えるものは、取り外し可能なブリッジと考えればいいでしょう。歯に付ける装置(支台装置、維持装置)には、様々な種類があります。失った歯が少なければ、しっかりと歯で支える構造をした入れ歯が、装着感や残った歯の健康のために良いというデータが出ています。
たくさんの歯がなくなった人の場合は、歯根膜負担にできません。折衷型となります。

右:口の中に装着したところ。

そこにぴったりと合うキャップ付きの入れ歯を
かぶせる方式の入れ歯(下あご)。
精密アタッチメント
歯び付ける装置や歯と入れ歯をつなぐ装置のうち外側からは歯のように見えて、内部に精密な連結装置を組み込んだものがあります。これは入れ歯の動き方を制限して、しかも外見をきれいにみせる工夫をしたものです。歯に加わる力を精密な装置で緩めることが一時流行しましたが、この種の装置は現在ではかえって支えの歯に悪いことが分かったため、あまり利用されなくなりました。
磁性アタッチメント
入れ歯に埋め込んだ小型強力な磁石をアタッチメントとして、その力で入れ歯が外れないように維持するもの。義歯の維持が難しい症例で下あごに使われることが多く、保険により処置できます。入れ歯に離脱方向の力やねじれた力が加わると自然に外れ、歯に有害な力を及ぼさないことが評価されています。
総入れ歯
総入れ歯は、歩けなくなった人が車椅子に乗って生活するように生活の不便を助ける道具です。粘膜と入れ歯は吸盤のように吸い付く力でくっついています。感覚の鋭敏なところで使う人工臓器ですので、初めて入れ歯をつくる時、1回で満足するような入れ歯が得られることはなかなかありません。しかし入れ歯が不安定な場合は、使いにくいだけではなく粘膜に傷ができることがありますので、早めに再調整してもらいましょう。
上の入れ歯には、比較的安定しやすいのですが、下あごがやせている人の場合には、入れ歯が安定しにくいことがあります。安定しない入れ歯を長く使っていた場合にも、粘膜や骨の形が変形し、悪いかみ癖がついているので、安定した入れ歯をつくるには時間がかかります。

快適な入れ歯はむずかしい。
左:やせた下のあご、右:ほとんど凹凸がない。

あごの粘膜のダイナミックなかたちを
写し取ったようなかたちをしています。

粘膜に当たる面はペラッとしたかたちではなく、
あごの凹凸を抱え込むようなもの(右)が良い。
保険の入れ歯と自費の入れ歯は、
規則上は床(しょう)に金属を使っているか
否かで分かれていますが、
大切なのは材料の違いではなく、
かみ合わせやかたちの違いです。